鳩吹山での森づくり -SATOYAMA CONCEPT MAPs-

地域の財産区有林をお預かりするところから
やまとわでは縁あって2022年より地域の財産区有林をお預かりし、森づくりを行なっています。
財産区有林というのは、簡単に説明すると市町村の公共財産である森林を、地域の人々が適正に管理する義務と、その資源を収穫する権利の両方が与えられて維持管理していくという場所のことです。全国に存在しますが、多くの場所は数年ごとに交代していく財産区の役員の方達が地域の方達から協力金を徴収して、区域の見回りをするといったところくらいまでしか活動できていないのが現状です。
やまとわが繋がりを持った財産区の役員の方々も、まさに「持ち回りで役員を引き受けたから」「山のことは全然よく分からない」そんな意見をもたれていて、良くも悪くもうまく活用してくれるなら使ってくれていいよというのがスタートでした。
木材生産地としては優れていない。じゃあ、この森をどう活かしていくべきか
そのような経緯でやまとわが管理を任せていただいた鳩吹山の財産区有林も、先人の方達が苦労して植樹したであろうカラマツ林やヒノキ林があったのですが、周囲の森と比べて取り立てて良い木材が効率的に収穫できるという森ではありませんでした。財産区の方達もこの山の資源を活用して収益を得るという取り組みは行なってきていませんでした。
一方で古くは地域の集落の燃料を収穫する萱場(カヤバ)や炭焼き場所として、現在では山頂でパラグライダーの体験ができたり、マウンテンバイクコースが整備されていたりと、鳩吹山には地域と非常に密着してきた歴史があることがわかりました。また、木材生産に適した森ではないかもしれないけれど、この森にはカラマツ林やヒノキ林のほかにアカマツ林や広葉樹林のエリアもあり、多様な顔をもつ森であることも魅力でした。
そこでやまとわでは、この森を何度もくり返し歩き、ときには様々な分野の専門家をお呼びしたりもしながら、10年後のこの森の未来を描いたビジョン図を作成しました。ビジョン図には木材収入だけに頼らない様々ビジネスチャンスのかたちと、こんな空間であったらきっと多くの人が森に遊びにきてくれるのではないかという思いを詰め込みました。
森を見て10年後のビジョンを考える

未来の姿を描いたビジョン図 -SATOYAMA CONCEPT MAPs-

素敵な森を作りつつ、多様なビジネスも生み出していく
森の仕事というと、多くの人が木を植えて育て、伐採して木材で売るといったことをイメージするのではないでしょうか。でも山や森が持っている役割は、何も木を育てる場所としての役割だけではありません。
私たちの飲み水を生み出してくれたり、貴重な動植物の住処になったり、災害から守る防災の役割を果たしていたり、その価値は図り知れません。昔の人達はそんな森と今より密接に付き合いながら、時に食料となる山菜や木の実・キノコを採取し、時に燃料となる枝木を集め、時にヤマドリの命をいただき御馳走にしていました。
そんな暮らし方はできないかもしれないですが、例えば山の中で栽培したキノコを販売していく、例えば広葉樹の山を整備しながら薪づくりを行なっていく、例えばこれから立派に成長する苗木を収穫して庭木として販売していく、ひとつひとつは小さなビジネスかもしれませんが、複合的に行なっていくことで鳩吹山の持つ魅力を最大限に活かしていけるのではないかと考え、私たちは少しずつ取り組みをはじめています。
森の中で複合的に小さなビジネスの形をつくる


森が身近に感じてもらえる場に
「100名山に登山には行くけど、普通の山って勝手に入っていいの?」「藪だらけの森でどこを歩いたらいいか分からない。中に入るのが怖い。」アウトドア好きの方からもこんな声はよく耳にします。
森と暮らしの距離が離れていってしまった現代、加えて日本の里山の多くは小さな区画ごとに個人の所有者がいて原則的には他人はそこで勝手に何かをすることはできません。そんな事情もあって、有名な山以外は多くの方達にとって遠くから眺めるだけの存在になってしまっているのではないでしょうか。
私たちの管理させていただいている鳩吹山は日本中どこにでもあるような普通の山(森)かもしれないですが、その普通な森で体験するひとつひとつの何気ないことが、もしかするととても価値のある体験なのかもしれません。
木登りをして鳥のさえずりを聴いてみる、焚火を囲んで仲間たちとコーヒーを飲む、そんな些細なことだけれど大切な時間も、この場所を通じて多くの方に提供できたらと思っています。
Shindo.春 2023
自分の身体で、感性で
やまとわが提案する身体と感性を生かして森と本気で遊ぶプログラム
https://yamatowa.co.jp/mori/shindo/
ビジョンのその先に
地域の財産区の方々から縁あってお預かりすることのできた鳩吹山。10年後の未来を見据えてつくりあげたビジョンをもとに実際の森づくりがスタートしています。
相手は自然、思い通りにいかないことも多いですが、森の声を丁寧にききながら、ビジョンの枝葉のところは軌道修正を加えながら、でも幹の部分は大切にしながら、やまとわが理念に掲げる「森をつくる暮らしをつくる」を体現する大切なフィールドとして、また地域の方々にとって言葉通り「財産」の森となるようにこれからも挑戦を続けていきます。
クレジット
クライアント|伊那市内の財産区
企画・ディレクション | やまとわ 取締役・森林ディレクター 奥田悠史
計画・設計・施工管理|やまとわ 農と森事業部・フォレスター 川内洋輔
プレーヤー|やまとわ 農と森事業部
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